言について

  1. 遺言とは?
  2. 遺言の必要性
  3. 遺言にはどんな方法があるの?
  4. 自筆証書遺言とは?
  5. 公正証書遺言とは?
  6. 秘密証書遺言とは?
  7. 遺言の執行
  8. 遺留分

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遺言とは?

遺言 … 遺言者の明確な最終意思を確かめてこれに法的な効果を与えようとする制度のことです。

相続の法定原則は、被相続人(遺言者)の意思によって修正することができます。相続は、被相続人の財産を承継することなので、被相続人自身が自らの財産の行方について最終の意思を尊重すべきであると考えられています。

遺言は、遺産の処理以外の事柄についても可能です。ただし、遺言の内 容の実現は法的に保障されることになるから、法的に意味のある事柄でな ければ遺言として取上げることはできません。

  遺言のみで可能な事項 生前行為でも可能な事項
相続に関する事項 ・相続分の指定(902条)
・遺産分割方法の指定、指定の委託、遺産分割の禁止(908条)
・特別受益の持戻し免除(903条3項)
・遺産分割における担保責任に関する別段の意思表示(914条)
・遺留分減殺方法の指定(1034条但書)
・相続人の排除、排除の取消(893条、894条2項)
相続以外の遺産の処分に関する事項 ・信託の設定(信託法3条2号) ・遺贈(964条)
・財団法人設立のための寄付行為(41条2項)
身分関係に関する事項 ・未成年後見人、後見監督人の指定(839条、848条) ・認知(781条2項)
遺言の執行に関する事項 ・遺言執行者の指定、指定の委託(1006条1項)  

※ 遺言者が分割方法を指定した時でも、遺言執行者が存在しない限り、共同相続人の合意によって指定と異なる分割を行うことも出来ます。

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遺言の必要性

遺言とは、自己の死後についてする意思表示ですので、特別なものという意識があるかもしれません。

しかし、遺言書が重要となってくるケースが少なくありません。私達が相談を受ける上で、もし遺言書があったら・・・と思ってしまうこともあります。

例えば …

お子様のいないご夫婦

被相続人の父母がいない場合には、残された配偶者に加え、被相続人の兄弟姉妹が法定相続人となります。兄弟姉妹には、異母兄弟や異父兄弟も含まれます。遺言書がない場合には、これら全員で遺産分割協議が必要となります。

相続人の中に行方不明者がいた

7年以上生死不明である場合には、失踪宣告の申立も可能ですが、行方不明になってから7年以下の場合には裁判所に不在者財産管理人の選任を申立てて、遺産分割協議をしなければなりません。

内縁関係にあった方

何十年と連れ添った方であっても法律上、相続人とはなれません。遺言書を作って遺贈する方法もあったのではないかと思います。

養子縁組をしていなかった

養子縁組をしていない場合、実子同様に何十年暮らしていても相続権がありません。

独身の方、お1人の方

被相続人の父母が相続人となりますが、いない場合には兄弟姉妹が相続人となります。兄弟姉妹が先に死亡している場合には甥や姪が相続人となります。それらの相続人と遺産分割協議をしなければなりません。

※ 遺言書があったからといって、絶対にもめないということはありませんが、遺言書一つで解決 出来ることが多くあるのは事実です。

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遺言にはどんな方法があるの?

☆ 遺言は、民法所定の方式に従わなければすることができません(960条)。遺 言者の意思を明確にし、後の変造や偽造を防止するために厳格な要式行為をとっ ています。 したがって、方式に違背した遺言は無効となります。

日本では、また方式の理解が十分普及していないので、方式違背のある遺言は少なくありません。厳格な要式行為であるために、遺言を避ける傾向にあると言われています。

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自筆証書遺言とは?

自筆証書遺言 …
遺言者が遺言書の前文・日付及び氏名を自書し、これに押印することによって成立する遺言のことです(968条1項)。

最も簡単に作成できる遺言書です。

メリット デメリット
・比較的簡単に作成できる。
・遺言の存在を秘密にできる。
・費用がかからない。
紛失の危険が高い。
変造偽造の危険が高い。
・自分で作成するため、文意が不明などの理由で効力が問題となることが多い。(決まった要件に沿っていない)
検認が必要(費用・時間がかかる)
☆POINT☆
  • 遺言者が遺言書の全文を「自書」しなければならないので、パソコンによって作成されたものでは駄目です。
    → パソコンで作成したものは、本当に遺言者の真意で書かれたものであるか分からないからです。
  • テープに吹き込んだものも自筆証書とはなりません。
  • 自筆で筆記する能力(自筆能力)が必要です。
    → ただし、視力喪失や病気のために手が震えるなどの理由により運筆を他人の助けを借りたとしてもそれだけでは自書能力は否定されません。
  • 自筆証書をコピーして作成された遺言は自書とはいえません。
    → カーボン複写は有効です。
  • 押印は、実印の他、認印や拇印でも認められます。
  • 年月だけで日付の記載がないものは認められません。年月日が正確に知りうる記載でなければいけません。
    → 「○回目の誕生日」「還暦の日」は有効ですが、「○年○月吉日」は無効となります。

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公正証書遺言とは?

公正証書遺言 … 2人以上の証人の立会いの下で、遺言者の口授に基づき公証人が遺言書を作成する遺言です。

法律の専門家である公証人が関与する遺言の方法です。

メリット デメリット
証拠能力が高い。
・遺言者が自署できなくてもよい。
・遺言の存在と内容明確にできる。
変造偽造危険がない
検認不要
・公証人や証人に内容を知られてしまう。
・手続きが複雑。
・費用がかかる。

自筆遺言は簡単なように思いますが、実際はトラブルになることが多いのが現状です。

また、せっかく遺言書を残しても、偽造や毀棄されると意味がありません。

それに比べ、公正証書遺言では専門家の下で作成されるため、形式面で無効となることはありませんし、原本が公証人のところで保管されるため、偽装や紛失の心配もありません。

確かに、費用はかかる上に、必要書類を準備しなければならない点で大変なこともあると思います。

しかし、よほど法律知識があり、確実だという人でない限り、手間と費用をかけてでも公正証書遺言の方式をとることをお勧めします。

資料収集や証人としての立会い等、当事務所行政書士がお手伝いします。当行政書士が証人となることで、他人に相続の内容を知られることを防ぐことができます。行政書士には職務上、守秘義務がありますので、ご安心ください。

☆POINT☆
  • 公正証書遺言は、公証人の面前で作成するので変造・滅失の危険もありません。
  • 遺言書の原本は公証人が保管することになります。
  • 家庭裁判所の検認も不要です。
  • 証人には、未成年者、成年被後見人、推定相続人、受遺者、それらの配偶者、公証人の配偶者、4親等内の親族などはなれません。
  • 遺言者が言語機能障害者の場合は、口授に代えて「通訳人の通訳(手話)による申述」または「自書(筆談)」により遺言の趣旨を公証人に伝えることが出来ます。
  • 遺言者又は証人が聴覚機能障害の場合は、公証人は読み聞かせに代えて、「通訳人の通訳」または「閲覧」により、筆記した内容の正確性について確認をすることが出来ます。
公正証書遺言作成の流れ
  1. 遺言内容の要点を作っておく(メモでもOKです。)
  2. 必要資料の収集をする(戸籍謄本、登記簿謄本、預金通帳など)
  3. 証人の決定と、日時の打ち合わせ
  4. 当日、証人とともに公証役場へ行く
  5. 証人2人が立会い、遺言者が遺言内容を公証人に口授する
  6. 公証人が遺言内容を筆記し、記載内容を読みあげる
  7. 遺言者と証人が内容に間違いのないことを確認し、それぞれ署名・押印する
    (このとき、遺言者は実印が必要です。)
  8. 公証人が遺言書が法律に従って作成されたものであることを付記し、署名・押印して原本を公証役場で保管する。
    (正本・謄本は遺言者や家族、遺言執行者などが保管します。)

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秘密証書遺言とは?

秘密証書遺言 … 遺言書を作成・封印の上、証人2人以上の立会いの下で公証人に遺言書であることを公証してもらう方式です。

遺言の存在を明らかにしながら、内容を秘密にして遺言書を保管できます。

メリット デメリット
・内容を秘密にできる ・手続きが複雑
・費用がかかる
検認が必要となる(費用・時間がかかる)
秘密証書遺言の流れ
  1. 遺言者が遺言書を作成し、署名押印する
  2. 遺言者がそれを封じ、遺言書に用いたのと同じ印章で封印する
  3. 遺言者が公証人および証人の前に封書を提出し、自己の遺言であること、自らの氏名、住所を申述する
  4. 公証人がその遺言書を提出した日付および遺言者の申述を封紙に記載する
  5. 遺言者および証人とともに公証人も署名押印する
  6. 遺言書は遺言者が保管する
☆POINT☆
  • 秘密証書遺言は、署名押印していれば、遺言書はパソコンや代筆でも有効です。
  • 秘密証書遺言としての要件を欠いていても、自筆証書遺言の要件を具備していれば、自筆証書遺言として有効となります。

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遺言の執行

遺言の執行 … 遺言の効力発生後、遺言の内容を実現する手続きをいいます。

遺言の効力発生とともに当然にその内容が実現されるものは遺言の執行は必ずしも必要ではありません。しかし、遺言の内容によっては、その内容を実現する手続きが必要なことがあります。

執行を要する事項 執行を要しない事項
・認知遺言
・相続人の排除またはその取消
・特定遺贈
・寄付行為遺贈
・後見人、後見監督人の指定
・相続分の指定、指定の委託
・特別受益者の相続分の指定
・相続間の担保責任の指定
・遺言執行者の指定、指定の委託
・遺産分割の禁止
・遺贈減殺方法の指定
遺言執行者 … 遺言執行の目的のために特に選任されたものをいいます。

遺言者に代わって遺言の内容を実現させるものです。民法では、遺言執行者を相続人の代理人とみなしています。

☆POINT☆
  • 遺言者は遺言で1人または数人の遺言執行者を指定することができます。
  • 遺言執行者に指定された者は、就職を承諾したときは、直ちに執行の事務に着手しなければなりません。
  • 未成年者および破産者は遺言執行者となることはできません。
  • 遺言執行者が第三者に任務を行わせるには、遺言で許されている場合かやむをえない事由がある場合に限られます。
  • 遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言に執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します。
    権利義務
    ┠ 管理権 → 専属
    ┗ 処分権 → 執行に必要な範囲
  • 遺言執行者がある場合には、相続人は相続財産の処分その他遺言の執行を妨害する行為を行うことができません。反してなされた行為は無効となります。
  • 遺言執行者が任務を怠ったときは利害関係人は家庭裁判所に解任を請求することができます。
遺言執行者の任務
  1. 財産目録の調製(1011条)
  2. 相続財産の管理、その他遺言の執行に必要な一切の行為(1012条1項)
  3. 復任権(1016条)
  4. 注意義務、報告義務、引渡義務(1012条2項、644条~647条)
  5. 新執行者の就職までの必要な処分(1020条、654条)
    ※費用償還請求権(1012条2項)、報酬請求権(1018条)があります。

遺言書を作成しても、その内容を実現してもらえるとは限りません。特に法定相続分と異なる配分を指定した場合や、相続人以外に遺産を与える内容の場合など、相続人が遺言執行に非協力的なケースが多く見受けられます。

そのようなときは遺言で遺言執行者を指定しておけば、その遺言執行者が遺言の内容を実現してくれます。

遺言執行者は相続人でも第三者でもなれますが、手続き等に専門的な知識を有するため行政書士などの専門家を指定しておくことがよいと思います。また遺言執行者の報酬についても、遺言で定めておくことが出来ます。

また、遺言執行者は、当然に相続人全員の代理人になります。遺言書に記載されている事柄を行うのに、遺言書さえあればよく、相続人からの委任状などは必要ありません。

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遺留分

遺留分 …
被相続人の生前の財産処分や死因処分によっても奪われることのない一定の相続人に留保された相続財産の一定割合のことです。

例えば「お世話になった○○さんに全財産を与える」ということを無制限に 認めてしまうと、残された家族が生活に困ってしまったり、相続人間に不公平感が生じてしまうことがあります。

そこで、民法で認められているのが遺留分なのです。

遺留分をもらえる相続人

遺留権者は、兄弟姉妹をのぞく法定相続人となります(1028条)。

配偶者(代襲者含む)・直系尊属(被相続人の父母)

※ただし、配偶者や子、直系尊属であっても、相続欠格者や排除された者、放棄をした者は相続権を失うので遺留分権者とはなりません。

遺留分の割合
相続人 法定相続分 遺留分
配偶者のみ 全額 1/2
配偶者と直系卑属(子) 1/2
1/2
1/4
1/4
直系卑属(子)のみ 全額 1/2
配偶者と直系尊属(父母) 2/3
1/3
1/3
1/6
直系尊属(父母)のみ 全額 1/3
配偶者と兄弟姉妹 3/4
1/4
1/2
なし
兄弟姉妹のみ 全額 なし
具体的な遺留分を決める際の、基礎となる相続財産

☆POINT☆
  • 遺留分は、被相続人が相続開始のときにおいて有していた財産の価格に贈与した財産の価格を加え、その中から債務の全額を控除して定めます。
  • 損害を加えることを知ってとは、客観的に損害を加えるという事実関係を認識していれば足り、加害の意図は必要ではありません。
  • 負担付贈与の場合には、その目的物の価格から負担の価格を控除して加算します。
  • 相続人の特別受益分は、1年よりも前のものであってもすべて加算されます。
遺留分減殺請求

相続人の遺留分が侵害された場合、受遺者(遺言によって財産を受けた者)や受 贈者(生前に贈与を受けた者)に対して、遺留分減殺請求をすることにより、侵害された分を取り戻すことができます。 しかし、この遺留分減殺請求権には時効があり、遺留分権利者が、相続のあったことおよび自分の遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ったときから1年以内(または相続開始から10年以内)に請求しないと、権利が消滅してしまいます。