産相続について

  1. 相続とは?
  2. 相続人とは?
  3. 相続財産とは?
  4. 相続分とは?
  5. 遺産分割とは?
  6. 相続放棄・限定相続とは?
  7. いつまでに決めたらいいの?
  8. 単純承認の効力とは?
  9. 限定承認とは?
  10. 放棄とは?

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相続とは?

人が死亡した場合に、その者の財産上の法律関係が他人に移転すること。

被相続人の死亡によって相続が開始される(民法882条・896条) →死亡には自然死亡(認定死亡を含む)、失踪宣告による擬制死亡も含まれる。 ※生前相続は認められません。

相続の方法
法定相続

法律に従って相続分が決まる
→ 但し、遺産分割協議により法律の規定とは異なる相続分を決めることはできます。

遺言相続

被相続人の遺言に従って相続分が決まる

※被相続人様の遺言がない場合には、民法の規定に従って相続・遺言手続きが進められます。 したがって、まず被相続人様が遺言書を残していないかどうか、確かめる必要があります。

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相続人とは?

相続人となれるのはどの範囲の人でしょうか?

1.配偶者(夫、妻)・・・・常に相続人となります(890条)。
→但し、内縁配偶者には相続権はありません。

2.血族相続人・・・・優先順位が決められています。

  • 第1順位:子供(887条1項)又はその代襲者(887条2項)
  • 第2順位:直系尊属(889条1項1号)
  • 第3順位:兄弟姉妹(889条1項2号)又はその代襲者

つまり、被相続人に子供や孫がいる場合には、第2・第3順位である被相続人の親や兄弟姉妹は法定相続人とはなれません。

☆ 仮に、子供が先に亡くなっていた場合、被相続人に孫がいれば、配偶者と孫が相続人となります。

※ 兄弟姉妹が相続人となれるのは、被相続人に子供(孫を含む)や父母、祖父母がいない場合に限ります。

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相続財産とは?

相続人は何を相続するのでしょうか。相続の対象となる財産相続財産といいます。

民法では、「被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」(896条)と定められています。

但し、例外として「被相続人の一身に属したもの」は相続財産から除外されています(896条但書)。

つまり、相続人は、被相続人に属する財産のうち一身に属したものを除く全ての財産を相続することになります。

→ 財産とは、権利だけではなく、義務債務も含まれることになります。

相続対象財産の一例
権利・プラス財産
  • 土地・建物等不動産所有権
  • 預貯金
  • 株券・債券等の有価証券
  • 車・宝石・骨董品等の動産
  • 電話加入債権
  • 売掛金・貸付金
  • 借地権・借家権・賃借権・経営権
  • 損害賠償請求権・慰謝料請求権
  • 著作権
  • 特許権・商標権・意匠権・実用新案権
義務・マイナス財産
  • 借入金返済債務
  • 買掛金
  • 損害賠償債務
  • 保証・連帯保証債務
一身専属権の一例
  • 生活保護受給権
  • 身元保証・信用保証など
  • 根保証債務(限度額や期間に制限がない場合)
  • 使用貸借契約の借主としての地位
  • 委任契約における委任者・受任者としての契約上の地位
  • 組合員としての地位
  • 代理人としての地位
被相続人に属さないものの一例
  • 墓地・墓石・仏壇・位牌等の祭祀財産
  • 生命保険金
  • 死亡退職金
  • 遺族年金
  • 香典

☆ 一身専属性のある権利・義務は被相続人に属する財産でありながら相続人には承継されないものであるが、これらは、そもそも相続開始時に被相続人の財産に属していなかった財産である点で異なります。

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相続分とは?

相続財産が相続人に相続されるのですが、具体的にどのような割合で相続されるのでしょうか・・・。

被相続人の意思が最優先されますが、被相続人による指定がないときには、法律の規定によって各共同相続人の相続分が定まります。

具体的には以下のとおりです。

相続人 相続分
配偶者と子供 1/2 : 1/2
配偶者と直系尊属 2/3 : 1/3
配偶者と兄弟姉妹 3/4 : 1/4
★POINT★
  • 子が複数の場合、全員で1/2を均分します。
    → 平成25年12月5日、民法の一部を改正する法律が成立し、嫡出でない子の相続分が嫡出子の相続分と同等になりました。
    新法が適用されるのは、平成25年9月5日以後に開始した相続です。
    もっとも、平成25年9月4日の最高裁判所の違憲決定があることから、平成13年7月1日以後に開始した相続についても、既に遺産分割が終了しているなど確定的なものとなった法律関係を除いては、嫡出子と嫡出でない子の相続分が同等のものとして扱われることが考えられます。
  • 直系尊属は、実父母・養父母の別なく、同新等の者は均等の相続分を受ける。
  • 兄弟姉妹が複数の場合、各自の相続分は均等となる。
    → 父母の一方のみを同じくする半血の兄弟姉妹は、父母の双方を同じくする全血の兄弟姉妹の相続分の1/2となります。
  • 代襲相続人が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分につきそれぞれの基準に従って各自の相続分が定められる。
  • 具体的な相続分の算定をする時には、特別受益や寄与分が考慮される場合があります。

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遺産分割とは?

遺産分割とは、共同相続財産を、相続分に応じて分割して、各相続人の単独所有と することです。

→ 相続開始とともに相続財産は、共同相続人の共同所有となります(898条)。遺産分割手続きを通して個別具体的各相続人に帰属させ、共同所有となっている相続財産を個人財産とする分配の手続きです。

遺産分割の方法
  • 遺言による相続分の指定による分割(指定分割・902条)
  • 共同相続人の協議による分割(協議分割・907条1項)
  • 調停、審判による分割
協議分割

共同相続人は、被相続人の分割禁止遺言がない限り、いつでも分割協議することができます。

→ 協議が成立する限り、内容的にどのような分割がなされても有効です。つまり、具体的な相続分率に従わない分割も有効です。もっとも、遺産分割前に出現した第三者の権利を害するような分割協議はできません(909条)。

分割の協議には共同相続人全員の参加が必要であり、一部の相続人を除いて協議しても無効です。

→ 参加すべき相続人を除外した遺産分割協議を行った場合、やり直すことが必要となります。但し、相続開始後に認知によって相続人となった者が遺産分割請求をした場合には、価格の支払い請求ができるのみとなります(910条)。

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相続放棄・限定相続とは?

相続人であるからといって、必ず相続を承認しなければならないわけではありません。相続の効果は、相続人の意思にかかわりなく相続の開始と同時に生じます。相続の承認・放棄の制度は相続人に対して一応生じた相続の効果を確定するか否認するかの選択の自由を認める制度なのです。

  • 単純承認(920条)・・・プラス財産が多いとき、債務超過でも引き受けたいとき
    → 権利も義務も無限に承継されます
  • 限定承認(922条)・・・債務超過か否か不明なとき、債務額が不明な場合等…
    → 有限責任となり清算されます。
  • 放棄(939条)・・・相続債務の超過が明らかなとき、相続を受けたくないとき、他の相続人に譲りたいとき
    → 初めから効果が生じなかったことになります。

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いつまでに決めたらいいの?

相続人となった者が、いつまでに相続を承認又は放棄するか決定したらいいのでしょうか。

→ 「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から、3箇月以内に相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない」と規定されています(915条)。

原則として「相続が開始したこと」及び「自己が相続人となったこと」を覚 知した時から、3ヵ月以内に決定し、手続を行わなければなりません。

→ 例外もあります。また、利害関係人や検察官の請求によって家庭裁判所において期間を伸長することができる場合もあります(915条1項但書)。

相続開始前の承認や放棄は無効となります。

限定承認や放棄をする場合には、家庭裁判所への申述が必要となります(924条、938条)。また、条件や期限を付することはできません。

→ もっとも、単純承認をする場合には何らの方式も必要ありません。

相続の承認や放棄をした場合、例え3ヵ月の期間内であったとしても撤回をすることはできません。熟慮期間内に慎重に考えることが必要です。

→ 制限行為能力による取消や詐欺・強迫による取消等は可能です。

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単純承認の効力とは?

単純承認 … 被相続人の権利義務を無限に承継する相続のことをいいます(920条)。

民法の規定では、単純承認が相続の基本の形態であると考えられています。

※3ヵ月の熟慮期間内であっても注意しなければいけないことがあります。 相続人が限定承認や放棄をしようと思っていても、相続人の行動から単純承認をし たとみなされる場合があるからです。

単純承認をしたとみなされる場合(921条)
  1. 相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき。
    → 保存行為や短期の期間を超えない賃貸をすることはできます。
  2. 相続人が熟慮期間内に限定承認も放棄もしなかったとき。
  3. 相続人が、限定承認又は放棄をした後でも、相続財産の全部もしくは一部を 隠匿し、債権者を害することを知りながら消費し、悪意で財産目録中に記載 しなかったとき。

単純承認をした場合、相続人は無限に被相続人の権利義務を 承継することとなります。

→ 無限にとは、相続人は相続債務を自己の固有財産をもってしても弁 済しなければならないこと(無限責任)を意味します。

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限定承認とは?

限定承認 … 相続によって得た財産の限度で弁済する責任を負う相続のことをいいます(922条)。

合理的な制度のように思えますが、複雑な手続きが必要となるため、実 際はあまり活用されていません。

限定承認の手続き
  1. 熟慮期間内に、財産目録限定承認申述書を作成して家庭裁判所に提出
  2. 限定承認した後5日以内に、一切の債権者及受遺者に対し公告する。
  3. 知っている債権者や受遺者の場合は、公告のほかに、各人にその請求を申し出るように催告する。
  4. 公告した申出期間後は、その期間内に申し出た債権者や知っていた債権者に、債権額の割合に応じて弁済(支払い)をする。
  5. 債権者への弁済が全て終了し、なおも残額がある場合に、その範囲内で受遺者への配当をする。

☆ 手続きに従って弁済するに当たって、財産を売却する必要がある場合には、「競売」の方法でしなければなりません。この競売には、債権者や受遺者も、自分で参加費用を負担すれば参加することができます。たとえば、相続人のうちの1人が「親の遺した家を売却したくない。」と考えた場合、家庭裁判所が選任する鑑定人が評価した価額を支払うことによって競売を止めることができます。

※ 限定承認は、共同相続人の全員で行わなければなりません(923条)。

→共同相続人の1人が単純承認の意思表示をしてしまった場合、他の相続人は 限定承認をすることができません。但し、一部の相続人が放棄をした場合、 他の相続人の全員で限定承認を行うことは可能です。

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放棄とは?

放棄 … 被相続人の権利義務の承継を全面的に拒否する行為をいいます。

相続放棄をするとその相続について初めから相続人とならなかったものとみなされます(939条)。

相続の放棄は、全員で行う必要はありませんので、相続人の一部が放棄 することも可能です。

借金などの債務が多いことが明らかな場合には、最初の相続人が放棄しただけでは、「全てを解決できた」というわけにはいきません。 放棄した相続人に代わって相続人となった者も「相続の放棄」の手続きが必要になります。

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